Time Passenger     〜時空を超えた愛〜

11












「それであんなに泣いてたのか?」
「……だって、本当に哀しかったんですからっ……!」



アレンは事の次第を包み隠さず神田に話した。
 

ミランダは誰にも言うなといっていたが、
この現状では、もはや嘘をつくことなど出来はしない。
神田も他言はしないだろうし、
後でミランダにも会ってきちんと謝ろうと思った。


話を聞いた神田は、アレンがそこまで自分を思ってくれていたという事実に
少ばかり驚いている様子だった。
それもそのはず、アレンが常に執着しているのは
養父のマナだとばかり思っていたのだから。


だが、アレンがマナとの過去を払拭することを諦め、
自分と過ごしたいがために、再びこの現実を選んだという。
確かに唐突な話だったが、話を聞いているうちに、
それがなぜかアレンらしいと思えてしまうから不思議だった。



「そうか……。
 じゃ、責任の一端は、俺にもあるわけだ。
 だが……お前は……本当にそれで良かったのか?」
「ええ、だから帰ってきたんです。
 僕には……神田の……キミのいない世界なんて耐えられない。
 そう、身に染みました……」



照れくさそうな笑顔を向けるアレンを、怒ることなどできはしない。



「……だが、あっちの世界には、もうひとりの俺がいたわけだよな?」
「ええ…その神田に、この琥珀をもらったんです。
 確かに神田は神田で、ホントにぶっきらぼう極まりなかったですけど…
 でも、それでもやっぱり、ボクに何かを感じ取ってくれたんだと思います……」



その言葉を聞いた瞬間、 神田の顔色が微妙に変わる。



「……確か、あっちの世界の俺は、あっちの世界のもうひとりのお前とデキてたんだったよな?」



アレンは悲しそうな顔で、こくり頷く。



「で、どうしてその俺が、恋人でもないお前にこんな大事なものをやったんだ? 
 この俺が、まだお前に琥珀の話すらしてねぇのに……だ……」



窺う様に覗き込まれ、アレンの表情が微妙に引きつる。



───そうだった。
現実世界の自分は神田が琥珀を持っていることすら知らなかった。
そんな大事なものを、向こうの世界の神田は、いとも容易く自分に渡してくれた。
考え方によっては、向こうの神田の方がよほど自分を気にかけてくれていたのかもしれない。


それに、いかに一時の感情に身を任せたとはいえ、
ロストという恋人が居る神田に惹かれ、そのうえ身体まで重ねてしまったのだ。



「そっ、それはっ…!」



アレンの背中を何とも言えない微妙な冷や汗が伝え落ちる。
そんな様子を見てとった神田の眉が、あっという間に不機嫌につり上がった。



「……寝たのか……?」
「えっ?!」
「あっちの世界の俺と……寝たのかって聞いてんだ!」
「だ、だって…神田は、神田なわけでっ…そのっ……」
「……寝たんだな……?」



次の瞬間、神田の顔が明らかに怒りで塗り変わる。



「そんなっ、怒んないでください! 僕はっ、相手が神田だったからっ……!」



一度火が付いてしまった神田の怒りを沈めるのが容易でないことは、
今までの経験上よく判っている。
だからといって、謂れのないことで怒りを買うのは、正直言って納得いかない。



「へぇ、そんなに俺に抱いて欲しいんなら、 今から嫌っていうほど抱いてやろうか?」
「えっ? あ……あのっ……カンダ?!」
 


もう収拾がつきそうにない。



「大事な琥珀をくれてやるぐらいだ。よっぽど奉仕したんだろう…そいつにな…」
「だっ、だからっ、神田っ……あっ…!」



神田は無理やりアレンをベッドに押し倒すと、乱暴にその唇を貪った。
身体を捩って抵抗してみたところで、到底叶うわけもない。
息苦しさに唇を緩めると、あっという間に神田の舌がアレンの中に入り込んできて、
息つく間もなく口内を蹂躙されてしまう。
 

さすがのアレンも涙目になりながら、声にならない訴えを神田に投げる。
だがそれも聞き入れられることはなく、
神田の行為はさらに激しさを増すばかりだった。
頤の付け根を強く抑えられ、無理に口を開かされると、
否応なく神田の舌が奥深くまで入り込んでくる。
己の舌を絡め取られ強く吸われると、
飲み込めない唾液が無残に頬を伝い鎖骨の窪みへと流れ落ちた。



「……くっ……ふうっ……」



淫らな水音が耳に響き、
いつしか自分がその感触に酔いしれている事を知る。
気がつくと、アレンはあっという間に両手の自由を奪われ、
身に纏っていたもの全てを剥ぎ取られていた。
 

既に抵抗する気力すら失せた頃、ようやく唇が開放される。
はぁはぁと荒い息で空気を吸い込むと、今度は感じやすい耳を舐めあげられた。
耳に神田の息が入り込み、その柔らかい舌で生々しい愛撫を与えられると、
ぞくりと背筋に快感が走る。
 

瞳を閉じたまま、その快感に酔いしれていると、
神田はその唇を徐々に下に下ろし、アレンの首筋に無数の赤い痣を付けだした。
鈍い痛みと快感が、渦になってアレンを襲う。



「あっ……かっ……かんだっ……お願い……っっ」



───もっと優しくして欲しい。


そんな願いは虚しく空を切る。
いやいやと首を捻ってみても、それは益々神田の欲情を煽るばかりで、
抑止力になど到底ならない。
その唇が胸元へと向かい、アレンの胸の突起を弄ぶ。
舌先で転がされ、時には軽くかじられたりするだけで、
アレンは小さな悲鳴をあげて身じろいだ。



「……やっ……ああっ……!」



いつになく執拗な愛撫に、さっきまで感じていた恐怖感のようなものは既に消え去り、
アレンはただ必死でその欲望を受け止めようとしていた。
時には暴力的な愛し方でしか自分の愛を表現できない目の前の恋人が、
何故か無性に愛しく感じてしまう。
こんな盲執的な愛しかたですら、嬉しいと思ってしまうのだから、
アレンの方もすでに末期的と言っていいだろう。
 

二人にとって、互いが禁断の果実のようなものだった。
一口その味を知ってしまうと、心も身体も魅了され尽くしてしまう。
神田の肌がその熱を増す毎に、下半身の昂ぶりも勢いを増してきていて、
薄い布越しにそれを感じるたびアレンの身体にも熱が篭った。
大きな掌がアレンの下半身を包み込むと、堪らず濡れぼそった声が細く漏れだす。



「うっ……はぁっ……」



直接触れられた手が熱くて、アレンは反射的に腰を跳ねさせた。
そのまま軽く扱かれると、背筋が浮き足立つような快感に襲われる。
濡れた先端を指で捏ねられると、蕩けそうな快楽がやってきて、
アレンは我慢できないとばかりに神田の名前を呼んだ。



「カ……カンダっ!」
「どうだ? もう我慢できなくなってきたろう」
「……んっ……いじ……わる…っ…!」



あとは言葉にならなかった。
そのまま熱い唇に触れられ、その中に咥え込まれる。
粘膜に扱かれる快感を嫌と言うほど味合わされて、
アレンは涙を流しながら身悶えした。



「ねっ、もう……きて…っ、おね……がい……」



舌を使われて吸われてしまうと、もうどうにも我慢できない。
今宵は一緒にいきたいのだと瞳で懇願すると、
それまで荒々しかった神田の表情が、少しばかり緩んだ気がした。



「一緒にいきたいのか? じゃあ、そうしてやる……だがな、
 俺がちょっとばかりムカついているのを、忘れんじゃねぇぞ?」



アレンの背中を支え、そのまま後ろを向かせると、神田はその後吼に己の昂ぶりをあてがった。
今日はまだ慣らしてもいないのに、そこはしっとりと濡れていて、柔らかくひくつく。



「随分と厭らしい身体になったもんだな……」



それも全て自分のせいなのだが、そんなことは棚に上げて、言葉でアレンを攻め立てる。
そしてゆっくりとその中に己を埋め込むと、アレンは堪えきれずに大きな嬌声を上げた。



「……ああっ!」



背中を大きく仰け反らせ、異物が入り込む快感に耐える。
神田は、今度はその白い背中にキスを落とし、首筋につけたものと同じ赤い徴を刻み込んだ。
アレンの身体には、もう無数の赤い華がその姿を刻んでいて、
何ともいえない色香を漂わせている。


それはアレンが己のものだという神田の所有印。
だが、その証を全身にくまなく刻み込んだとしても神田の気持ちが治まることはない。
愛しい相手を人目に触れさせることのない場所に仕舞い込み、
昼夜問わず愛し続けたとしても、その気持ちが絶える事は、永久にないのだ。 
 

神田は片手でアレンの先を掴み、アレンが先に達してしまわないようにと戒めた。
いきそうでいけないその苦しみに、アレンは涙を流しながら耐え忍んだ。



「……辛いのか?」
「……だぃ……じょ……ぶ…っ」



その表情からは決して大丈夫そうには見えないが、
神田の思惑を悟っていたアレンは堪えながらそう答えた。



「お前が、他の奴になんて触らせるからだ」
 


たとえそれが別の時空にいる自分自身だとしても、到底許せる事ではなかった。
言いようのない嫉妬心が神田の中で蠢いていた。
それは激しい動きとなってアレンの中に叩きつけられる。



「あっ……ああっ……!」



何度も感じる場所を擦られ、勢いよく抽挿を繰り返されると、
身震いするほどの快楽で思考能力さえなくなってしまう。
荒い吐息と濡れた音が響き渡り、神田の汗の臭いがアレンを包み込む頃には、
アレンはもう既に半分意識を手放しかけていた。



「……もぅ……だ……め……」



アレンの状況を察した神田は、その戒めを解き、アレンを開放してやった。
そして己も既に限界が近い事を知り、より深いところへとその動きを続ける。
乱れた吐息と、生々しい熱気だけが、部屋の中に充満している。



「ああっ!」



開放され、突き上げられたアレンは、すぐにでもその欲望を解き放とうと身体を撓らせた。
その強い締め付けが、神田の自制をあっという間に奪い取ってしまう。



「……うっ……く……」



神田がアレンの腰を思い切り引き寄せ、小さく呻いた。
アレンの深い場所が飛沫で焼かれ、衝撃でアレンも大きく仰け反る。
欲望を白いシーツの上へと吐き出しすと、アレンは小刻みに震えて、
そのまま意識を手放したのだった。
























《あとがき》

とりあえずは、神田のやきもちエッチです(=^▽^=)
当時の描写はなんというか……ぬるめですねぇ〜←
何か、読んでてこっちが気恥ずかしくなってしまいました(´Д`;)
今はドンだけ腐ってしまったのか……と自分を振り替えざるを得ない現状;

この次はいよいよラストです♪
お楽しみにwww






                                    
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